その恋の思い出は本当にあった事実ですか?精神医学・脳科学のドクター達が語る『美しい恋の思い出』の正体とは?


子供の頃の初恋…
夜も眠れないほど好きで好きでたまらなかった人との記憶…
初めて付き合った人との思い出…

美しい恋の思い出は、誰にでもひとつやふたつあると思います。

でもそれは、脳が作り出した偽りの思い出かもしれません。

今回は、精神医学や脳科学のドクター達が語る『美しい恋の思い出』の正体を解説します。

なぜ人は恋をするのか?

この記事を書く発端となったのは、

部下である、20代の看護師さんから失恋の相談を受けた時の事です。

失恋の痛手を慰めてあげようと、必死で頭をひねったのですが…

恋愛経験の少ない私には、彼女を納得させる上手い答えが見つからず、 知り合いの精神科ドクターに相談したのがきっかけです。

まず、「人はなぜ恋をするのか?」という私の問いに対して、そのドクターから出た答えは

「子孫を残すため」

という味も素っ気もないものでした(笑)

そのドクターの解説では、

全ての生き物には子孫を残す本能が組み込まれていて、

微生物など細胞分裂で増える生物を除いた生き物は、子孫を残すためにオスとメスという異性のDNAを組み合わせなければならず、

それぞれ自分が欲しい特徴のDNAを持つ相手を常に探しているのだそうです。

そして、自分の欲しい特徴のDNAを持つ相手を見つけた時、

「そのDNAが欲しい!」

という衝動が『恋』の正体だと言うのです。

面食いの人は『整った外見のDNA』
スポーツマンが好きな人は『強い身体のDNA』
頭脳明晰が好きな人は『優れた脳のDNA』

という、少しでも優秀なDNAを、自分の子孫に残したくて『恋』をするというのです。

このドクターの話で『美しい恋の思い出』が、ただの生物の生殖本能だと知り、美しくも何ともない思い出に変わってしまいました(苦笑)

運命の赤い糸はただの思い込み?

アメリカ合衆国のノースウェスタン大学フェインバーグ医学部助教授であるDonna Jo Bridge女史が、学術誌『The Journal of Neuroscience』に発表した研究によると、

人間の脳の記憶(思い出)は、写真や動画のように実際に経験した事実を正確に記録したものではなく、

その時々の状況によって自在に変化するのだそうです。

例えば…

ある時、あなたが素敵な異性と出会って『運命の赤い糸』を感じ、お付き合いする事になったとします。

しかし、その人と大きなケンカをして別れてしまいました。

その時あなたの記憶には、

「運命の赤い糸なんて勘違いだったんだ…」

と、その人との恋は失恋の『辛い記憶』として残るはずです。

しかし、失恋したはずのその人と偶然出会い、またお付き合いする事になって、

今度は結婚にまで至り、幸せな家庭を築けたとしたら…

きっとあなたは、

「やっぱりこれは運命の赤い糸だったんだ…」
「あの時に別れたからこそ、あの人の大事さがわかった…」
「あの時、別れて良かった…」

と思い、

『失恋の辛い思い出』でしかなかった記憶は、幸せに至る過程として『美しい恋の思い出』の記憶に書き換えられるのです。

このように人間の脳は、その時々の状況で変化する記憶を『運命』だと思い込み、

実際に起きた事実を『美しい恋の思い出』の記憶として書き換えているだけなのです。

脳は事実を断片でしか記憶できない?

オウム真理教信者の洗脳を解いた事で有名になった、脳科学者の苫米地 英人氏は、自らの著書『「イヤな気持ち」を消す技術』の中で、

事実は、断片的にバラバラの状態でしか脳に記憶されず、

何かを思い出そうとすると、その断片の記憶を事実とは関係なく重要度によって拾い出し、自分の都合の良いように結び付けて思い出す。

と語っています。

子供のころ好きだった人の話を他の同級生とすると、なんだか微妙に話が食い違ったりした経験はないですか?

これは、自分と同級生が同じ体験をしていても、事実を断片で記憶していて、

自分は、好きだった人の『美しい思い出』として良い記憶の断片だけをピックアップして拾い出して、自分の都合の良いように繋ぎ合わせて思い出し、

その人を特に好きでもなかった同級生は、美しくも何ともない『普通の思い出』として記憶の断片を繋ぎ合わせて思い出している。

という事で起こっている話の食い違いです。

こうやって人間の脳は、事実とは違う思い出を自分の都合の良いように作り出しているのです。

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記憶は感情で変わる?

人間が記憶する時には、情報が脳の中心部にある『海馬』という器官を通ります。

この海馬は、記憶の振り分けを行っていて

『忘れてはいけない記憶』は長期記憶として大脳皮質に残し、

『忘れてもいい記憶』は残さず、短期記憶として徐々に忘れてしまいます。

この時、『忘れてはいけない記憶』と『忘れてもいい記憶』を振り分けるために重要な役割りをするのが『扁桃体』という器官です。

『扁桃体』は、良い感情・悪い感情に関わらず、感情の刺激で興奮します。

その感情の刺激が強ければ強いほど扁桃体は興奮し、

「これは絶対残しておいてよ!」

と、 海馬に指示を与えて、大脳皮質に記憶を長期的に保存させます。

誰かを好きになる『恋』も強い感情ですので扁桃体を興奮させて、大脳皮質に記憶を残すのですが、

扁桃体を興奮させた感情が、良い感情なのか?悪い感情なのか?で、記憶の仕方が変わりますので、

実際には『汚い』ものでも、『好き』という良い感情で扁桃体を興奮させると、『美しい』ものとして記憶させてしまいます。

例えば…

一般的に臭い体臭は汚いものとして『悪臭』になりますが、

好きな人の体臭であれば、いくら臭くても美しい『良い香り』として記憶していると思います。

それは、本来『汚いもの』という事実でも、『好き』という良い感情が扁桃体を興奮させているため『美しい』ものに変換して記憶させていて、

好きでも何でもない人の体臭は、同じ匂いでも『悪臭』として記憶させるのです。

この時の記憶は、事実ではなく感情に振り回されていると言えます。

つまり、失恋の苦しみも「好き」という感情があるからこそ、捨てられた辛い記憶として残っているのであって、

ある程度の時間が経過したり、他に好きな人が出来たりして、失恋した相手への「好き」という感情が薄れてしまえば、

辛くも何ともない「ただの思い出」に変わるという事です。

まとめ

このように 『美しい恋の思い出』は、もしかしたら事実ではなく、

あなたの脳が作り出した、あなたに都合の良い『幻想』なのかもしれません。

しかし、精神医学や脳科学的には『幻想』だとしても、

『美しい恋の思い出』 は、何かのきっかけで思い出した時、切なくもあり・懐かしくもあり、良い気持ちにさせてくれる『脳の贈り物』になります。

結局、失恋をした看護師さんを慰める答えにはなりませんでしたが、

この話題をきっかけに自分の初恋を思い出し、甘酸っぱい懐かしい思い出に浸る事ができて、

『美しい恋の思い出』 を創り出してくれた自分の脳に感謝しようと思いました。

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